法学概論レポ

法学概論の前期のレポ、読み直してたんですけど、我ながらよく書いたなぁ、と。評価は、上から2つ目のAだったんですけど、前期のときは、「裁判員制度」っていうテーマが自分の中でハッキリあったからよかったんですけど、今回、インターネットと著作権がらみでそこまで書けるか、めっちゃ不安になってきましたorz

裁判員制度の意義と問題点
 裁判員制度は、裁判を国民にとって、身近でわかりやすいものにすること、裁判に国民の一般的な市民感覚を取り入れることによって、国民の司法に対する信頼を向上させることを主たる目的として、2009年5月21日から実施される、新しい制度である。私は、裁判員制度のこのようなコンセプトには共感を覚えている。しかし、実際の裁判員制度運用にあたっては、多くの問題点があると考えている。本レポートでは、裁判員制度がもつ意義と、裁判員制度の問題点(=改善すべきであると考える点)について述べる。なお、本レポートを作成するにあたり、『裁判員制度』(丸田隆著 平凡社 2004年7月発行)、『裁判員制度の正体』(西野喜一著 講談社 2007年8月発行)および、最高裁判所制作の、裁判員制度Webサイト(http://www.saibanin.courts.go.jp/)の記述を主たる参考資料とした。引用の際、書名やWebサイト名のみ記述しているものは、これらいずれかの資料の記述によるものである。
 日本では、1999年以来、裁判制度、国民への司法サービス提供、法曹養成制度など、司法制度全般に関する改革が「司法制度改革」として行われている。裁判員制度は、その一環として、2001年6月に出された司法制度改革審議会の意見書に基づいて作られることになったものであり、2004年5月には「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」すなわち「裁判員法」が制定、公布された。裁判員制度は、この法律によって規定されている。
裁判員制度導入の背景として、先進諸国では、類似制度である「陪審制」(アメリカ、イギリスで実施)や、「参審制」(フランス、ドイツ、イタリアで実施)によって、国民が裁判に参加する仕組みが設けられているのに、日本にはそのような仕組みがないという事実や、日本でもかつては陪審員制度が導入されていたという事情がある。日本でかつて導入されていた陪審員制度について、『裁判制度』の記述を部分抜粋する。
かつて日本にも陪審制度があった。陪審法案は、大正デモクラシーの影響を受けて、原敬内閣が方針を決めた。この法案が加藤友三郎内閣で成立するまで五年を要し、一九二三年(大正一二年)に陪審法が成立し、一九二八年(昭和三年)に施行された。日本の陪審制度は、刑事事件についての陪審心理を認めた。その制度の特徴は、次のとおりである。
  1.死刑・無期に当たる判決は必ず陪審で行う(法定陪審という)。
  2.長期三年以上に当たる事件は被告人の請求があった場合に陪審で行う(選択陪審という)。
  3.陪審員は一二人。男子のみ、国税三円以上を払う国民から選出する。
  4.陪審は単純過半数で決める。
  5.裁判官は、陪審の判断を拒否(陪審の更新)をすることができる。
  6.量刑を含めて陪審評決に基づく地裁判決は控訴ができない。・・・(中略)
   しかし、日本の陪審制度は、「戦時」を理由に停止された。陪審制度の停止を決めた「陪審法の停止に関する法律」では、「刑事について法律で陪審の制度を設けることを妨げない」という規定を設け(同法三項三条)、刑事陪審の復活を予定していた。しかも戦後間もない一九四六年(昭和二一年)三月五日に、政府は陪審制度復活の閣議決定もした。しかし、政府はその決定を今日至まで果たしていないことになる。
       (同書p.58~59,61より。一部、体裁を改めた箇所がある。)
つまり、裁判員制度の導入は、当時の閣議決定を(制度自体は、一般市民のみで有罪または無罪を決定、および事実認定を行う陪審制度ではなく、裁判官も発言をし、決定に関与する参審制に近いものとなったが)実現するという意味合いも含まれていると言えるであろう。
 私は、前述の通り、裁判員制度のコンセプトには賛成である。裁判員制度によって、従来の専門用語ばかりが飛び交い、一般市民が全く理解できなかった裁判が、裁判員となる一般市民にも理解しやすい言葉で、丁寧に進められることになるならば、それは歓迎すべきことであろう。また、国民が裁判に参加することにより、現代の日本における、裁判官も弁護士も、検察官のいうことを鵜呑みにし、事実認定棟について疑うことをせず、裁判の焦点は、執行猶予が付くかとか、懲役何年かなど、量刑ばかりに目がいってしまっている現状(これは、日本の裁判における有罪率が99.9%であるという事実が物語っているであろう。)に、風穴を開けることができるのならば、それは望ましいことである。しかし、実際には、それは理想論でしかないだろう。私は、裁判員制度は、そのメリットよりも多くの、そして大きな問題を抱えていると考えている。
 裁判員制度がもつ問題点として、第一に、裁判員制度が対象とするのは、庶民には縁遠い事件ばかりであり、「裁判に国民の一般的な市民感覚を取り入れること」の必要性に疑問が残る、ということがあげられるだろう。裁判員制度が対象とするのは「具体的には、(一定以上の)放火、殺人・殺人未遂、強盗傷害・強盗殺人、強姦致死傷、傷害致死、身代金目的の誘拐、通貨偽造、危険運転致死、爆弾の使用(爆発物取締罰則違反)などがこれにあたります(中略)他方、軽い刑事事件のほか、民事事件、行政事件、少年事件、家事事件などにはこの制度は適用されません。」(『裁判員制度の正体』p.18~19)とのことであり、さらに、死刑や無期懲役など、有罪の場合、極めて重い刑を下さなければならないこともある。裁判官はともかく、一般の裁判員がこのような重い裁きを他人に下すことに荷担するということの心理的重圧に耐えられるのか、という懸念もある。
第二に、日本人の気質は、裁判員制度に不向きである、ということが言えるであろう。日本人は「和」を重んじる民族である。周りと同じように、協調性をもった言動や態度を取ることが美徳なのである。故に、審議の場において、他の裁判員の意見に同調して判断を下してしまう可能性も十分にある。さらに、裁判員制度陪審制度とは違い、事実認定、有罪・無罪の判定、量刑に関する決定に至るまで、全てが裁判官と共に進められる。したがって、法的知識や経験の豊富な裁判官が、裁判員の出した意見に対して、「そのようなケースでは通常、○○であるということはなく、××なのですよ」といった発言をした場合、裁判員全員がその発言に同調してしまったとしても、それは無理からぬことであろう。もっとも、裁判員制度では、裁判官と裁判員はあらゆる面において対等であるとされており、裁判員に、裁判官の考えを押しつけるような発言は好ましくないとされているが、裁判官が持つ知識と経験、それに付随するプライドというものを考慮すれば、審議においてそのような発言を完全に無くすことは難しいと思われる。そして、そのような発言によって裁判員の比肩が判決に反映されなくなってしまえば、裁判員制度の意味はなくなってしまう。第三に、裁判員制度が国民に課す負担が重いという問題があるだろう。前述の、裁くことへの心理的重圧に加えて、裁判員制度自体に、多くの罰則規定が設けられており、国民に負担を強いていると言える。例えば、「裁判所が裁判員の辞任を認めない限り,裁判員は,裁判に出席する義務があります。正当な理由がないのに裁判所に出頭されない場合には,10万円以下の過料の制裁を受けることがあります。」(裁判員制度Webサイト)という規定がある。私は、電動車椅子ユーザーである。そこで、裁判員制度Webサイトで、裁判所のバリアフリー情報について調べたのだが、バリアフリー情報については、サイト内のQ&Aコーナーに、次のような記述があるのみだった。
  Q.裁判員裁判のために,裁判所の施設は改良されるのですか(バリアフリー,食堂,休憩室,喫煙所など。)。
 A.裁判員制度の実施に向けて,既存施設の活用を図りながら,必要に応じて施設の改修や増築を行っています。
  身体の不自由な方の利用にも配慮し,バリアフリーに対応した法廷を整備したり,裁判員の休憩スペースを考慮した評議室を設けたりするなど,参加しやすい工夫をしています。
正直、たったこれだけの情報では、なんの役にも立たない。私の電動車椅子は、重さが80キロ以上あり、ほんの少しの段差でも、昇ることが困難である。そのため、各裁判所の詳細なバリアフリー情報を、できれば写真付きで見られるくらい充実されていなければ、裁判所へ行くにあたり、不安を感じてしまう。電話相談などもあるだろうが、繋がりにくかったり、受付時間が決まっていたりして不便である。裁判所という大きな組織であり、裁判員制度という重大な制度なのだから、バリアフリー情報等も、もっと充実させるべきだと感じた。もっとも、私のような障害がある者は、裁判員を辞退できるかもしれないが、そういった姿勢は、全ての国民を対象とした裁判員制度の、あるべき姿とは言えないだろう。
 裁判員制度開始後しばらくは、さまざまな問題が起こるだろう。問題の発生は、新しい試みにはつきものであり、避けて通ることはできない。裁判員制度が、着々と改良され、問題をクリアしていき、いつの日か、真に「裁判を国民にとって、身近でわかりやすいものにすること、裁判に国民の一般的な市民感覚を取り入れることによって、国民の司法に対する信頼を向上させること」を実現する制度へと発展することを切に希望する。


↑前期に出したレポート。(一部体裁改)提出日前日の夜中から、当日の昼過ぎまで、ぶっ通しで書きました。ホント、よく書いたよなぁ。。。
そして、今回も明日が提出締め切り。。。やるしかないのだが…orz